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ヒューム「人性論」の内容を分かりやすくザックリ解説

近世の哲学で「知識はすべて経験によるもの」と主張するイギリス経験論の流れを組む代表的な哲学者として、ヒュームがあげられる。そんな彼の主著の「人性論」では、まず「原因と結果」について、つまり「因果論」についての考察を残している。

今回は彼の深い思索を途中までナビゲートしていきたいと思う。

 

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デイヴィッド・ヒューム

この記事は中央公論新社が出版した人性論の抄訳を元に執筆しています。

1.観念と印象とは

感覚器官が事物を何であるかを見分けることを「知覚」と言うが、この知覚には二種類あるとヒュームは言う。それは「観念」と「印象」だ。観念とは、勢いのない思い浮かべられた事柄の姿のことで、印象とは、きわめて勢いよく激しく入り込む知覚である。単純にするなら、思考することと、感じることの違いだ。

そして、観念と印象はそれぞれ「単純」と「複雑」という性質に分けることができる。単純とは部分に区別できない事を表し、複雑とは部分に区別できることを表す。分かりやすく例えるなら、りんごは特殊な色、味、香りを持っている。これらは区別できるから「単純」な性質を持つものである。以下まとめ図。

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ここで、観念と印象は勢いの点を除くと、他のどんな点でも類似があることが分か例えば、暗闇の中で作る赤の観念と、日の光の中で目に入る赤の印象は程度が違うだけで、本質上の違いはないと言う。

すると、これら2つは対応していると考えることができ、「観念と印象のうち、どちらが原因で、どちらが結果なのか?」という「人性論」のこれからの主題となる問いが生まれる。

ここで、いきなりヒュームは命題を立てる

初めて現われるときの単純観念はすべて、それと対応し、それが正確に再現する単純印象に起因する

つまり、単純印象が原因。単純観念が結果であるということ。ここから経験主義的な考え方が見て取れる。

この命題を裏付ける例を考えた。例えば、生まれつき盲目である場合のように、たまたま障害を受けて働かないときには、常に印象だけではなくこれに対応する観念もまた失われる。

2.観念と印象の流れ

議論が複雑になってくるので、まず図を見てほしい。

 

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印象には「感覚の印象」と「反省の印象」があるとヒュームは言う。 この図から、反省の印象の方が先になるのはこれに対応する観念に対してだけで、感覚の観念に対してはこれより後になり、反省の印象は感覚の観念に起因することが分かる。

ヒュームは観念と印象の細やかな流れを見抜いたのだ。

3.記憶と想像の観念

 上の図からも分かるように、どんな印象も心に現れると、ある程度の時間を経て再び観念として心に現れることがあるが、この観念には二通りの現れ方がある。それは「記憶」と「想像」であると言う。「記憶」とは新たに現れるとき最初の活気をかなりの程度まで保持していて、「想像」とはすっかり活気を失って完全な観念であるようなものである。

この二つの観念の間には、記憶の機能が対象を描き出す強さの違いがあることは明白だが、これに劣らないもう一つの相違がある。

それは、想像のほうはそのもとの印象と同じ順序、同じ形に拘束されないのに対し、記憶に関してはその点においてある意味で拘束されており、変形する力を少しも持っていないことである。

4.因果論の展望

 単純観念は想像によって、好きなようにどんな形にでも分離、結合するから、もし仮に想像がその働きをいつ、どんな場合でも、ある程度一様にするようないくつかの普遍的な原理によって導かれるのでないのならば、いつも同じ単純観念が(普通そうなっているように)定まった仕方で複雑観念となるのは不可能であることが分かる。

彼はその普遍的な原理を3つ考えた。「類似」、時間的もしくは場所的な「近接」、そして「原因と結果」である。そして、最後の「原因と結果」の関係ほど、想像において強い結合を生じ、一つの観念から別の観念へたやすく思い起こさせる関係はないだろう。と断言する。

このようにして、ヒュームは「原因と結果」について、すなわち、「因果論」について考えていくことになるのだ。

今回はヒュームが因果論を考えるにあたって使う大事な概念を解説した。

ヒュームの思想についてもまた続きを執筆したいと思う。

何か質問したいことなどあったらコメントしていただきたい。

 

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